とんかつ、とんかつ、とんかつ。

かえる目のライブを聞いたのはキドアイラック以来なのでかれこれ2年ぶり。ほとんどが今まで聞いた事がない曲。ちょっと切ない歌詞とメロディのかずかず。「おっさんの肉体にユーミンが宿る」とかもうどうでもええんじゃなかろうか。そんなことは関係ないかえる目の世界。この世界を映像化するとしたら、動画よりマンガが似合いそう。
約1時間のライブに続いて映画『喜劇 とんかつ一代』の上映。1963年の作品。“食”と“親戚”が絡まりあった喜劇。オープニングでとんかつが作られていく映像が流れるがいまの作り方と何も変わらない。当たり前だがすでに完成されていた。出演者はそうそうたる顔ぶれ。中でもフランキー堺三木のり平の動きや表情がいちいち素晴らしい。フランキー堺を誘う団令子の色っぽさといったら。映画の舞台は上野近辺。町並みを見ているだけで面白い。途中湯島天神から御徒町方面を見下ろすシーンがあるが、こまごまとした家の向こうに松坂屋がどかんと建っていた。デパートに輝きがあった時代か。舞台になっているとんかつ屋の向かいが芸者の置屋になっている。確かに御徒町は少し入ると風俗街が広がっている。いまどきは風俗街に食の名店があることはあまりないだろうが当時は違和感がなかったのだろう。不忍池のほとりにそびえる完成直後の精養軒。まわりに大きな木が立っておらず建物の形が良く見える。これくらいの時代の映画は概ね街路樹が少なく街が広く見える。そういえばこの映画では鉄道が出てこなかった。商売、生活の全てが街の中で完結していた。当時はそんなもの?
ライブが目的だったが、当時の上野界隈を垣間見る事ができるこの映画を見られてよかった。しかし“爆音”で見る必要は全くない映画だった。