わたしいまめまいしたわ

写真を撮る人にとってセルフポートレイトはなぜ普通じゃないのか。自画像を描くときは鏡に映ったままを描くのか左右を反転させて描くのか写真で撮ったものをみて描くのか。
澤田知子さんの作品を初めて面白いと思えた。額縁に入り美術館の壁にかかっていたからか?いままで顔と見えていたものが記号に見えたから? 写真と絵画が並んでいるとつい絵画の方に引きこまれる。見えないものに気づかせてくれる力が絵画には多く含まれているように感じた。舟越桂さんのスフィンクスの力強さ。ビル・ヴィオラの悲しさ。久しぶりに高嶺格さんの「God Bless America」。営みと作品と世界の交わり方。郭徳俊さんは今年作品を誰の顔で作ることになるのか。最後の部屋にあったキムスージャさんのビデオ作品。街角に立つ「針の女」を見つめる街の人たちが都市によって違うのが面白い。日本じゃ無視する人が多いんじゃないかな。
図録は服部一成さん。数年前この美術館で開催された「ドイツ写真の現在 ― かわりゆく「現実」と向かいあうために」展の図録がボクの好きな図録第1位だった。前回のきっちりがっしりした“ドイツ的”なデザインとは違いB4版で、ダイニングテーブルでゆっくり眺めるのに向いている。表紙がちょっと子どもっぽすぎか。
多くの作品が同美術館のグループ美術館所蔵作品で構成されていた。いい展覧会でだった。
美術館を出て、北の丸公園(初めて入った)を抜け早稲田通りを下り神楽坂へ。坂を上り毘沙門天に差し掛かった頃、春一番が吹き荒れた。